さくらネットワークチーム
平成20年度さくら中核事業レポート:「教育関係者招へい事業」
国際交流基金(ジャパンファウンデーション)は、2009年3月に、世界15カ国から教育関係者87名を、10日間日本にお招きしました。参加者の多くは、外国語教育を担当する行政官や日本語のクラスがある学校の校長など、各国の教育現場において重要な立場にある方々です。
多文化共生・異文化理解の重要性がますます高まってきている現代の国際社会において、外国語学習もそのための手立てとして役立つと考えられています。もちろん日本語もそのひとつです。この事業は、海外の教育現場のキーパーソンとなる方々に、日本の文化と社会を直接見聞していただき、日本語教育について考えていただくこと、またジャパンファウンデーションとのパートナーシップを強固なものにしていただくことを目的として実施致しました。
10日間の日本滞在は、海外の日本語教育、日本の教育制度、日本の外国語教育などをテーマにしたレクチャーや、日本語授業体験、学校や日本語教育機関の訪問・交流、文化体験など、たくさんの内容が詰まったものでした。
日本語教育に関心を持っていただくための情報提供として、ジャパンファウンデーション日本語事業部長より、日本語教育の現状に関する講義を行ないました。JF日本語教育スタンダードの開発など、ジャパンファウンデーションの日本語教育の取り組みについても説明し、参加者からは自国の日本語教育の状況に照らして、活発な質問や意見が出されました。また、ジャパンファウンデーションの附属日本語教育施設を訪れ、日本語学習者や、日本語教師との交流会を持ち、ジャパンファウンデーションが開発している日本語教材や、ウェブ教材等の紹介も行ないました。
実際に参加者自身が日本語の授業を受ける体験もしました。授業は、通訳を通さずに日本語のみで授業を行なう「直説法」という方法で行なわれました。日本語を学ぶのは初めてという人が多かったのですが、90分間の授業後には、参加者全員が日本語で自己紹介ができるまでになりました。参加者からは、「日本語の教え方の良い例を見ることができた」「学習者の立場に身をおいたことは、教育者として重要な体験だった」といった意見が聞かれました。
日本の教育制度に関する研修では、各国で教育に携わる参加者にとって、身近なテーマだったこともあり、日本の学校教育システムやカリキュラム、授業時間や年間授業数等について専門的な質問がたくさんされました。また、2010年から開始される小学校の英語活動が紹介されると、これまで英語が小学校のカリキュラムの中に無かったことに対して驚きの反応があったり、早期から外国語教育に力を入れすぎることで、母国語が衰退の方向に向かってしまわないかといった質問がありました。
学校訪問では、訪問した小学校、高校から暖かい歓迎を受け、先生や生徒との交流・授業見学・給食体験をしました。参加者からは、日本人の協調性、清潔さ、組織性の高さの根本を見たという感想が聞かれました。
より広く日本への関心・理解を深めていただくために、茶道、華道などの伝統文化体験をしたり、秋葉原、浅草、京都などを訪れました。参加者の方々には日本の歴史とともに現代の日本を理解し、感じることができたのではないかと考えています。
10日間の日本滞在の最後のしめくくりとして、国ごとの小グループに分かれて、ジャパンファウンデーションのスタッフも加わり意見交換を行ないました。日本語教師の交換留学制度や、日本語教材の情報の取得など、今後、取り組んでいく具体的な要望とアイディアが出され、帰国してからも、ジャパンファウンデーションの海外事務所と連携して日本語教育に積極的に取り組むつもりだという力強い言葉が聞かれました。
日本を知り、日本語教育について考えたこの事業への参加を通して、新しいネットワークが生まれ、海外の日本語教育の更なる発展につながることを期待しています。